マジで苦労したところ → こう対応した
シリーズ5本目。きれいな話は前の4本で書いたので、ここは愚痴も含めて書きます。AIと開発すると、想像していなかった種類の苦労があります。
アプリが重すぎて使えなかった
ゲーム本体は1枚のHTMLで約1MB。これをAIのチャットアプリで扱おうとすると、アプリが固まります。ファイルを貼るだけで応答が止まり、会話が長くなるとさらに遅くなる。開発初期は「AIが賢いかどうか」以前に「アプリが動くかどうか」との戦いでした。
対応: チャットにファイルを貼るのをやめました。ファイルはGitHubに置き、AIはそこで作業する。チャットでやるのは判断と指示だけ。1本目に書いたGitHub連携は、性能問題の解決策でもありました。
推測でAIが進めてしまい、何度も痛い目を見た
これが一番多い。具体例をいくつか。
- ゲームの紹介文を書かせたら「ロケットで地球を飛び立つ」と書かれた。そんなシーンはない。ゲーム内のテキストを確認せずに、それっぽい話を作っていた
- 「アイテムは画面の下を流れる」と書いた。実際は上。プレイしていれば明らかなのに、AIはプレイできない
- 「このファイルはあるはず」で作業を進め、実際は無く、別のページを上書きした
- 数値を「メモリーに書いてある値」で計算し、実際のコードとズレていた
共通しているのは、AIは「知らない」と言うより「それっぽく埋める」ほうを選ぶということです。悪意はない。ただ、埋め方がうまいので、こちらが気づきにくい。
対応: 「未確認」を強制する。「確認したか」を聞く。確認していないなら確認させてから話を進める。面倒ですが、痛い目を見た回数を考えると圧倒的に安い。
ChatGPTに移行したが、こちらも地獄だった
アプリの重さと推測癖に耐えかねて、一時期ChatGPTに移りました。結論から言うと、別の種類の地獄でした。
まず、率直な印象として、Claudeに比べるとChatGPTは明らかにクオリティが下がりました。進歩の早い世界なので現状は変わっていくと思いますが、私が開発をしていた2026年3月〜8月のあいだは、返答もコード開発も、Claudeのほうが質の高い形で返してくれていたと思います。
それと、妙な癖がありました。最新版が出てから1週間くらいは「お、さらにできるようになったな」と感じるのに、1週間を過ぎると途端にアホになる。毎回そう感じたので、気のせいではないと思っています。これも困りました。
そして、BANされた
決定的だったのはこれです。当初このゲームは子ども向けとして制作していたのですが、ある日突然「幼児虐待の可能性がある」としてアカウントをBANされました。異議を申し立てても、二度と復活できませんでした。
心当たりはまったくありません。調べてみると、子ども向けのアプリや学習ドリルを制作している人たちが、同じようにBANされているケースが見つかりました。おそらく「子ども」に関する語をコンテンツに含む開発が、自動判定に引っかかったのだと思います。
このとき強く思ったのが、GitHubにプロジェクトのすべてを保存しておいて本当によかった、ということでした。アカウントは消えましたが、コードも、判断の経緯も、ルールも、全部GitHubに残っていた。失ったのは会話の履歴だけで、開発そのものは止まりませんでした。
この話は02「AIのメモリーは当てにしない」に書いたことの、いちばん極端な実例です。AIの中にしか無い情報は、アカウントごと消えます。
対応: Claudeに戻りました。そのうえで、ツールを変えるのをやめて運用を変えました。どのAIでも事故は起きるなら、事故を防ぐのはAIではなくルールと確認です。そして、いつどのAIが使えなくなっても続けられる形にしておくこと。これが一番の保険になりました。
AIは時々、ものすごくアホになる — 世界のナベアツ現象

普段はまともなのに、あるタイミングで急に理解力が落ちる。さっき説明したことを忘れる、簡単な指示を取り違える、同じ間違いを繰り返す。私はこれを「世界のナベアツ現象」と呼んでいます。(3の倍数のときだけアホになる、あの芸です。普段は普通なのに、特定の条件で突然おかしくなる感じがそっくりで)
起きやすいのは、会話が長くなったとき、複数の話題が混ざったとき、こちらの指示が曖昧だったとき。
対応:
- 会話が長くなったら新しい会話に切り替える。引き継ぎはAIにIssueへ書かせておく
- 1つの会話で1つの話題。ゲーム本体の修正と、サイトの修正を同じ会話でやらない
- おかしいと思ったら「今の理解を3行で説明して」と聞く。ズレていたらそこで直す
- AIに「簡潔に聞いて」と言う。長い確認は、それ自体がナベアツを誘発する
それでも続けている理由
ここまで愚痴を書いておいてなんですが、AIなしでは、このゲームはできていません。物理エンジンの導入、たくさんのアイテムの画像処理、惑星ごとのハザードの実装、サイトの構築、記事の下書き。ひとりで趣味の時間にやるには、量が多すぎる。
物作りが好きな人には、夢のような環境
私は長年、Webやゲームの仕事に携わってきました。理由は単純で、デジタルの世界で物作りをすることが好きだったからです。
組織に属して仕事をするのは、自由に物作りができるわけではないし、デメリットも多くあります。それでも、他の人と連携できること、会社の予算で物作りが進められることは、大きなメリットでした。個人では、企画・設計・実装・デザインを全部ひとりで抱えることになる。現実的に無理があるから、会社という枠組みが必要だったわけです。
それが、変わりました。
AIを使うと、プランナー、ディレクター、プログラマーなど、3人月分くらいのコストが月額200ドルに収まってしまう。この数字を最初に実感したときは、正直、少し呆然としました。かつてなら予算を取り、人を集め、スケジュールを引いて、ようやく着手できた規模のものが、ひとりの手元で動き始める。
組織に属することなく、自由に物作りができる。これが最大のメリットだと思っています。作りたいものを、作りたいように作れる。会議も稟議も要らない。夜中に思いついた仕様を、その夜のうちに試せる。
とくに、これまで会社でWebサイトやアプリサービスに携わってきて、物作りが好きな人にとっては、夢のような環境が来ていると思います。ドメインの知識も、仕様を詰める力も、品質を判断する目も、そのまま活きる。足りなかった「手を動かす人手」の部分を、AIが埋めてくれます。
もちろん、ここまで書いてきたとおり、手放しで楽になるわけではありません。AIは優秀だが確認をしない部下だと思うとちょうどいい。任せられる仕事は多い。でも最終確認だけは、絶対に自分でやる。その前提でいれば、思ったより遠くまで行けます。
最初から知っていたら
- チャットに大きいファイルを貼らない。最初からGitHubで
- AIは「知らない」と言わない前提で、確認を仕組みにする
- ツールを変えても地獄は変わらない。運用を変える
- アカウントは突然消えることがある。GitHubに全部残しておけば開発は止まらない
- 会話は短く、話題は1つ。アホになったら新しい会話
- 物作りが好きなら、いまは組織に属さず自由に作れる環境がある——3人月分が月額200ドルに収まる時代
このシリーズは、まだ続きます。思い出したこと、新しくハマったことがあれば書き足していきます。